直撃マリア、台風前夜の悲観。


早い目覚め。
台風が近づく前に買っておこうと、缶コーヒーを買いに出たら風がごーごーなってて
我が家の眼前にある空き地に張り巡らされている『安全第一』と書かれたオレンジ色のフェンスが
飛んできていつ首に刺さってもおかしくない状況下に二分程度いました。
何が安全第一か。
聞いてあきれる。


今週はコンビニに行くことをやめることにしました。
勝手ながら。
そこでピンときた僕は今日の台風襲来に備え、
昨晩21時ごろ食品を買いだめしてやろうとトーホーに向かったのだけれど
僕と世の主婦どもとの思考とが完全にシンクロしたのかトーホーのおそうざいコーナーには
忌まわしき天丼とかぼちゃコロッケしかないという惨劇に見舞われた。
棚一面すっからかんだ。
やってくれる。
ポテトサラダやナスの煮浸しやらが食べたかったのに時すでに遅し、
こずるい主婦どもの執拗でむごたらしい嫌がらせによって僕は
500gの特大キムチとビール2ケースを買ってトーホーを後にすることとなった。


すると帰ってくるなりメッセンジャーで少年から
「ハンバーグまじ作りすぎちゃったんスよ」
「パティだけで200gあって」
とかタイムリーに痛いところを突くメッセージが届いたので、
正直に、今し方キムチとビールだけを買ってきた旨を伝えたら
「おすそわけに行きましょうか?(´・ω・`)」
となんだか気の毒な人と思われたようで、
そのまま親切な申し出を享受すればいいのに僕は何故か
「さっき買ったキムチ、500gあるもんね」
「ビールも2ケースあるし」
などと意味の分からない虚勢を張ってしまった。
「今回はパティにじゃがいもを入れてみました」
といかにも食欲をそそるコメントを残し、
少年はサインアウトしていった。


500gのキムチをつつきながらビールを飲んでいたら
さきほどの申し出を断ったことを猛烈に後悔した。
そしてビールを1ケース飲み終えた頃、
酔いつぶれて寝て、起き、今、
難民のような顔でこれをタイプしている。


しかし、閉店間際に行っても確実にひとつは残ってるトーホーのポテトサラダが、
なぜ昨日に限って売り切れてるのか。
釈然としないまま今の今までいたのでだけれど、
いま唐突に閃いた。


犯人は他でもない。
少年だ。
僕の『今週はコンビニに行かないぞ脳波』を感知したペンタゴンスーパーコンピューターに、
偶然少年がハッキングしてそのログを見つける。
これはしめたもんだと昼の間にトーホーに行き、
ポテトサラダを買い占め、
小憎たらしいことにそれをハンバーグに練り込み、
じゃがいも入りハンバーグパティを作っておく。
コンビニ行かないぞ波と同時に出たであろう、
『ポテトサラダが食べたい波』までものぞき見されていたのだろう。
あとはもう簡単。
飢えた僕に、じゃがいも入りハンバーグを作った旨を報告するのみ。
ひとつの謎が解けると、
絡まった毛糸がするするとほどけるように他の謎も解ける。
彼は最近バイトを再開している。
更にパチンコをする彼にとって、
パチンコで大勝ちした日にトーホーのポテトサラダを買い占めることなど
容易いに違いない。
なんと大掛かりで陰湿ないじめだろうか。
たぶん昨日は神戸中のスーパーをまわっても、
僕がポテトサラダを売られてるのを見ることはかなわなかっただろう。
しかしハンバーグの付け添えに最適なポテトサラダをパティに練り込むことによって
『ハンバーグを食べるだけでポテトサラダまで食べられる夢の共演』を短時間で構想し、
実現した彼もすごい。敵ながらあっぱれだ。
だが策士策におぼれる、
僕は持ち前の直感で、少年の用意したエサを回避することができた。
そんな自分をほめたい。
ほめてあげたい。
お腹はすごく空いているけれど。