四月一日に。

四月一日に風邪をひいてしまった。
こんなにノドが腫れたのは成人してから初めてかもしれない。
辛い。


何が辛いってノドの腫れもそうなんだけど、エイプリルフールってことね。
一年で唯一ウソが許されるこの日。
みんな身構えてるわけですよ。
連れに助けを求めようにも、メールじゃ無理だね。


坊『風邪で辛いねんけど薬をもってきてくれませんか』
友『六回チェンジしたらヤクザが来たでござる』


無理もない、というか正しい。エイプリルフールの正しい過ごし方ですそれは。
しょうがないから電話だ。この声を聞けと。ウソじゃないことを証明してやるよと。


坊「も・・」(もしもし、って声が出ない)
友「もしもーし。ほんまに風邪なん?」
坊「いや・・・ノド・・・」(いやとにかくノドが腫れて)
友「???・・・ハッ!なんかあったん?だいじょうぶ?!」
坊「そ・・・で・・」(そうじゃなくて、声がでんのよ)
友「泣いとん!?いまどこ?」
坊「(絞り出すように)ごめん、またメールする」


腫れのせいで、しづらい呼吸は嗚咽に、
鼻づまりは泣き声に。
なんかすごい誤解を生んでしまった。


もう一から説明するのがとても面倒くさいので、
メールで『ひっかった?』と風邪をひいたのはウソでしたってことにしておいた。


もう人には頼れない。自分のことは自分で。
せめて身体が動くうちにのど飴を、とコンビニにふらふらと出かけたら、
綺麗なブロンドの外人お姉さんが目の前を通り過ぎていった。
何気なく後ろ姿を目で追うと、
お姉さんのグレーのジャンパーの背中には大きく、
『ICE CREAM』と書かれてあった。
直前に吸い込んだタバコの煙は、肺に届く一歩手前で口外へと逆流し、
僕は満面の笑みを浮かべながら派手にむせ倒した。


薄れゆく意識。
塞がっていく気道。
そこに連れからの優しいことばはなかった。


次回、世界の中心でアイ(I)を叫んだ(SCREAM)ケモノ。


そんなつまんないことを考えてたら、見事にのど飴買い忘れた。
サービスサービスゥゥゥゥ!