タナトスとブラックアウトと血溜まりが、雨でおまわりさんと救急車。
毎度いっぱいのお運び有り難く御礼を申し上げますが、
えー、上方にとある坊主がおりまして、
この坊主、どうにもなまぐさで、
飲む打つ買うが全部好き。
とりわけ酒を呑むのを一番の愉しみとしている、
とんでもない坊主なんですがー
この坊主、
普段はおとなしいんですが、
ひとたび酒を呑むと虎になる。
いわゆる酒乱ってやつです。
自分の家、まぁ坊さんですからお寺でありますな、
そこでこっそりと呑む分には結構なことなんですが、
よそ様の家で呑んじゃうとこれが大変。
その日もこのなまぐさ坊主、とある檀家さんの家に法事を執り行いにいったのですが、
出てきたお酒に手を出したもんだからさぁ大変。
大虎になって仏壇を倒すは、
檀家さんに詰め寄るわの大騒ぎ。
愛想尽かされて檀家さんに追ん出されたんですが、
もう日はとっぷりと暮れ、
酒を呑んでるので千鳥足。
揚げ句の果てに、帰り道までわからなくなる。
おんなじ道を行ったり来り。
あっちにふらふら、こっちにふらふら。
どうにも迷って帰れないので、
酔った頭で考えるわけですな。
これはひとつ高いところにのぼって上から見下ろして見てやろうじゃないかと。
酒乱の人間が酔った頭で考えるわけですから、
まともなことなんてできやしない。
その男、どういうわけかそこいらに架かってあった橋の欄干にのぼってみたんですな。
どうでいと言わんばかりの仁王立ちで。
そこにこう、タイミングよく岡っ引きが通りかかるわけです。
岡っ引き:
少年〜!なんだかわかんないけど、人生捨てたもんじゃないぞ
君が死んだらお父さんお母さん、どう思うかなぁ?
坊主:
死ぐ?
岡っ引き:
しぐ? あぁそうさ。死ぐ気になりゃ何だってできるさ!
坊主:
死がねぇよ
岡っ引き:
そっか!
坊主:
空飛ぶんだ!
岡っ引き:
おぉ、そいつはよかった!
坊主:
月にタッチするなんてワケないよ
岡っ引き:
うんうん!その意気だ!
坊主:
I can fllllllllllllllyyyyyyyyyyyyyyyy!!!!!!!!!!
岡っ引き:
Yes! You can fly!!!
という風にこの坊主、
ピンポンを再現してしまったわけですな。
結果、
口内裂傷4ヶ所、
擦過傷・裂傷十数ヶ所、
打撲十数ヶ所、
亀裂骨折2ヶ所という、
まぁ至極当然な結果が待ち受けていたわけです。
ここで驚いたのは檀家さん。
さっき追ん出しちまったから飛び降りたんだと慌てふためいて、
お医者を呼んで、救急車なる駕籠までやってくる騒ぎ。
飛び降りという連絡を受けたお医者はお医者で、
岡っ引きに応援を頼む。
この坊主、
檀家さんの口利きで岡っ引きにふん縛られることはなかったんですが、
赤い提灯がぐるぐると回る駕籠に囲まれて、ぐーぐー高いびきで寝てるわけです。
このとんでもない坊主、
そのままどうにかこうにか家までたどり着いたわけなんですが、
次の日になってびっくり。
血塗れになった袈裟と全身の傷。
飛び降りたときにしこたま頭を打ったわけですから、
記憶が無い。
帳面をめくって昨日の行動を思い出して、
法事に行った檀家さんに連絡をとるわけです。
檀家:
体大丈夫ですか?覚えてないんですか?
昨日の醜態を聞かされ坊主は青ざめるわけですな。
携帯電話なるものの前で必死で頭を垂れて謝るわけです。
人の良い檀家さんは反省する坊主を見て、
許すわけですな。
檀家:
酒の席でのことなのでもう何も申しません。
坊主:
面目無い。
檀家:
その程度のケガで済んだのも、仏様あってのことですよ。
坊主:
面目無い。
檀家:
反省なさっているようですので、今回のことは水に流します。
坊主:
面目無い。
檀家:
ただお坊様、次同じことをしたら、あたしだって黙っちゃいませんよ。
坊主:
面目無い。
檀家:
2度目は無いと思っててください。
坊主:
いやぁ申し訳ないんだが、それ、「4度目は無い」に変えてくださらんか?
檀家:
?
坊主:
仏の顔も三度まで、って言うじゃないか。
お後がよろしいようでー
嘘ですごめんなさい。
本当にごめんなさい。
もうしません。
多方面にご迷惑をおかけしましたことを謝らせてください。
あと生きてます。
腕も足もついてます。
ご心配おかけしました。
この痛みは自分への戒めとして、
しかと受け止めおとなしくしておきます。
いろいろ世話をやいてくださったかたがた、
ありがとうございます。
おかげさまで要介護1くらいに回復しました。
ありがとう。
皆のおかげでこうして生きてます。
ぼぁー。