さなぎから孵化への手順。
死ぬ気でラフをあげる。
さあゲームだ。
いや待て。
それよりも寝よう。
この疲れ切った身体を休めるべく寝よう。
今なら薬なしで寝れる。
もう間違いない。
昼過ぎまで熟睡しよう。
もうサナギの如く寝よう。
そしていざ目が覚めたときにはどうだ、
僕は蝶の如く軽い身体を手に入れ、
ふわりと身を浮かすやいなや、この街中を羽ばたいて─
などと考えてたら父から電話。
「誕生日プレゼントに布団買うたったから明日の午前中に持っていく」
と非常に分かりやすい午前中は起きとけよ通告を受けてがく然とする。
父の言う午前中がいつなのか分からないから、
9時のアラームで起きる。
それから三時間。
いつ鳴るかわからないインターホンを気にしつつ、
Amazonから届いたDVDも見れないままうやむやに時間は過ぎる。
もう午前中は終わってしまった。
もう午後だ。
さては危篤か。
もう齢六十を間近にする父だ。
急に倒れてもおかしくない。
それか持ってくる道中に事故にあったか。
柄にもなくプレゼント(布団はどうかと思うけど)を買ったのは
死期を悟ってのことだったのか。
などという心配は無用だった。
正午に実家に電話したら母がでて、
「お父さん?打ちっぱなしに行ってる」
打ちっぱなされろ。
完全に打ちっぱなされろ。
布団を貰うための寝不足。
この言い知れないコントラディクションを抱えたまま、
結局14時ごろに来た父から
僕はハンガリー産羽毛布団を受け取った。
枕はちゃんとそば殻で、硬かった。
母のアドバイスが混じってるな、と思ったけど嬉しかった。
ありがとう。
でもこれだけは言わせて欲しい。
毎年毎年、12月5日に何かしらくれるのは嬉しいのだけれど、
僕の誕生日は12月15日です。
いいかい?もう一度言うよ?
僕の誕生日は12月15日です。
お父さん、お母さん。
プレゼントをくれるなら、
お願いだから間違えないで。
もう27回も間違えられたと思うと、
橋の下で拾われたのかなって思うよ心の底から。