ボーダーを。

すごくいやらしい夢を見た気がして、
目が覚める。


体中が痛み、
そして僕は布団の上ではなく、
フローリングの上で起き上がる。


キッチンまで歩き、ぬるいミネラルウォーターを一息で飲んだ。
目の前に転がる発泡酒の空き缶は、どれもへこんでいて、
キッチンの奥の棚を覗くと、焼酎がほぼ丸一本なくなっていた。
傍らには一冊の赤いカタログが落ちていて、
シンクの中には箸が一本転がっていた。


額にはコブができていて、
左肩にはすごいアザがあった。


嫌な気分で一本だけの箸を洗い、
濡れた手で赤いカタログを拾った。
そこには「ボーダーを越える、ボーダフォン」と書かれていた。
うんざりして赤いカタログをごみ箱に放り投げた。


どうやら僕は昨夜ボーダーを越えたらしい。
声が聞こえた安堵感がリミッターを外し、
体中に負担をかけながらも僕は軽々とボーダーを越えていったらしい。


昨晩の記憶はそれ以上トレースできなかったので
缶コーヒーを買いに家を出たら、缶コーヒーはもうホットになっていて、
やっぱり昨晩の記憶は、これ以上トレースできない。